深みを感じさせる
女優とひとくちに言っても舞台、テレビドラマ、映画など活躍する場によって雰囲気が全然違います。
舞台ではとにかく声を張り上げなくてはいけません。
公演も何度もあり、カメラで撮って放映されるものではありません。
遠くの席からも分かるようにオーバーなくらい動く必要もあります。
テレビドラマはエンターテイメント性が求められます。
深いテーマを掘り下げた脚本よりも、多くの人が面白く見られるものが好ましいのです。
映画となると、声を張り上げる必要もなく、派手に動き回る必要もなく、多少複雑な脚本になっても重いテーマを扱うことができます。
そのため映画女優となると、同じ演技をする職業といえとも持っている雰囲気が落ち着いていたりします。
映画は人の歴史や心などの表現を、1時間2時間という枠に凝縮した芸術作品です。
監督をはじめ、命をかけているような本気があります。
映画女優が、演技をするという同職の人よりも近寄りがたい深みを感じさせるのはそういうところにあるのでしょう。
現代の名女優とは
現代の女優で、類まれな演技力の持ち主といえば、私はやはりアメリカのメリル・ストリープを挙げたいと思います。
メリル・ストリープはアカデミー賞候補の常連です。
決して特別美人というわけではありませんが、演じる役柄により、どんな女性にも変身してしまう演技力には舌を巻くしかありません。
私が初めて銀幕上で彼女を見たのは、ジェーン・フォンダ主演の「ジュリア」でした。
チョイ役でしたし、その時は話題にも上りませんでした。
しかし、確かな演技力はほんの一瞬の出演場面でも光っていました。
映画雑誌によると、メリル・ストリープの実力を認め、起用したのは他ならぬジェーン・フォンダだったそうです。
その他「ゴッドファーザー」などに出演して、着々とスターの座に上って行きましたが、私が最も印象的だったのは「フランス軍中尉の女」に主演した彼女です。
劇中劇の中の二人の女性を演じる巧みさは、目を見張るものでした。
演出に工夫を凝らした監督の力量はもちろんですが、メリルでなければあの役はできなかったでしょう。
演技力あるハリウッド女優は沢山いますが、彼女はその中でも別格ではないでしょうか。